歩いてハセツネ23時間《まりそん》

2024年10月13日、知る人ぞ知る山岳耐久レース「長谷川恒男CUP(通称ハセツネ)」に初挑戦し、ほぼ走ることなく23時間かけてゴールしました。

『山登りは好きだけど、レースにでて大丈夫だろうか』『本当に歩いて完走(完歩)できるの?』とお悩みの方もいるかと思います。

私もレース前は不安で、リタイヤするかもしれないと弱気でした。

でも、大丈夫です。歩いてゴールできました

それでは、ハセツネを歩き倒した23時間、どのように過ごしていたかご報告します。

1.装備品

まずは装備品をご覧ください。

16リットルのザックに詰め込みました
ウェア一式(防寒着とレインウェア上下はザックへin)

荷物を詰めたザックはなんと6.6㎏の重さになりました。背負うとショルダーが肩にがっちりと食い込み、出走前からダメージが大きいです。

ウェアは汗冷えしないように、ドライレイヤー+メリノウールのTシャツ+薄手のロングパンツを着用。暗くなってからはオクタ素材の長袖を重ね着し、休憩時にはさらにウィンドシェルをはおりました。シューズは先輩くまちゃんのお下がりHOKAのスピードゴートです。

ヘッドライトは250ルーメンで歩くには十分の明るさでした。前に誰もいないときは道を間違えないように一時的に600ルーメンにすることもありました。

トラブル時の予備としてジェントスのハンドライトも用意。

レース前、荷物の重さに絶望する

歩いて完走するために大事なことを自分なり考え、①ケガをしないこと、②不測の事態に対処できるように準備することに努めました。

足首にはテーピングを貼り、ポーチに胃腸薬・下痢止め・MAGMAをしのばせ、簡易トイレやコンタクトを外したくなったときのために眼鏡もいれました。(胃腸トラブル・トイレの心配をしていました)

さらに完走できなかったときのためにサバイバルシート、助けを呼ぶための大音量ホイッスル、レインウェアはリタイヤ時の防寒着にするつもりでしっかりしたものを用意しています(こうやって荷物が増えてしまったわけですね)

2.レース経過

さて、ここからはレース経過です。予想(予定)と実際の比較です。(スマホから見る時は横向き推奨)

  予想実際備考
5ℓ

持参3.5ℓ
給水1.5ℓ
4.2ℓ日中は暑かったが、夜間は寒くてほとんど飲まず。三頭山を通過してからは飲みたいだけ飲んだが、それでも余った。

・ハイドレーション:スポドリ2ℓ
・フラスク(3本):ルイボスティー500ml+緑茶500ml+水500ml
・月夜見でスポドリ1ℓ+水500ml補給
食料3000kcal2800kcal1時間半ごとにジェル等を摂取。
ジェルだけだとお腹が空くので、醍醐丸、浅間峠、月夜見ではパンをかじる。 持参した食料はほぼ食べきった。
日の出山ではのんびり栗まんじゅうを食べた。

セクション 予定  実際 備考
スタート
(五日市中学校)
13時
00分 
13時
02分
スタートはEグループ(後ろから2番目のグループ)

平らな道路は周りに迷惑をかけない程度に走ったが、すぐに坂道・山道に入り歩く。荷物が重くて走るのが辛い。。(走ったのは本当に少しです)

この時間は半袖でちょうどよい気温。
今熊神社でトイレ(1回目)
醍醐丸17時
20分
17時  
20分
到着
醍醐丸に到着した時にはすでに薄暗く、ヘッドライトを装着。(日の入り時間17時10分)
少し肌寒くなってきた。
浅間峠(関門)19時
30分
19時
22分
出発
浅間峠で休憩(20分)+トイレ(2回目)  

浅間峠からはポールが使えるので、かなり歩行が楽になる。荷物も軽くなって、気温も涼しい。長袖を着用。

西原峠までは緩やかな登りが続く。
西原峠23時
10分
22時
20分
西原峠から三頭山までの登りがきつい。。
歩くと汗ばむが、気温は下がっているのでトイレ休憩で立ち止まったらすぐにウインドシェルを羽織った。三頭山避難小屋でトイレ(3回目)  

三頭山に到着。ベンチがたくさんあるが、真夜中の標高1527mは風が吹いていて寒い。早々に出発した。 ここまでの登りで足を使い切ってしまい、鞘口峠までの下りがきつい。
鞘口峠1時
30分
0時
53分
鞘口峠での小休憩でハイドレーション(2ℓ)を飲み切った。(フラスクのお茶も含めて約2.5ℓ消費)

携帯の電波がはいったので、家族にラインする。
月夜見(関門)3時
00分
2時
11分
到着
月夜見は真冬を思わせる寒さ、地面は底冷えしていて、長居すると動けなくなりそうなので、早めに出発(実際は25分も滞在していた)

ヘッドライトの電池交換+出発前にトイレ(4回目)

月夜見からは前後に誰もいないことがあり、心細さもあったが、一人旅の時間だと思って楽しむ。暗闇が少しずつ柔らかくなり、山が目覚めていくこの時間帯が一番好きだった。 (日の出時間5時48分)
大ダワ6時
00分
6時
00分
大ダワに着いたときには朝になっていた。
ヘッドライトを外し、5回目のトイレに行く。  

三頭山を越えてからペースが落ち、そのおかげで心拍数は130以下をキープ、予想外に体力は残っている。 胃腸トラブルもなく、水分も十分にとれている。トイレは並ぶことなくスムーズで、予想していた時間のロスもなし。
今年は天候に恵まれて、雨は降らず、霧は数分で終わり、乾いた地面は踏み固められていて、一度も転ばなかった。

ただ、前太ももの痛みが強く、ペースを上げることができない。特に大岳山の岩場・悪路・鎖では苦戦した

御岳山へ向かう道の途中でトイレ(6回目)
長尾平8時
15分
8時
38分
予想タイムを過ぎて長尾平を通過。
ここまで来たら歩いてもゴールできる。とにかくケガをしないように歩き続ける。登りと平らな道は早歩きした。

日の出山から金毘羅尾根を2時間半かけて下った。ポールがあって本当に良かった。
ゴール
(五日市中学校)
10時
30分
12時
00分
お昼12時のチャイムをBGMにゴールイン!
(最後の直線だけカッコつけて走りましたが、直前の曲がり角までよちよち歩きでした)

いかがでしょうか。予定を1時間30分もオーバーしていますが、制限時間まで残り1時間の余裕をもってゴールです。(あと30分遅かったら、時計とにらめっこするところでした)

大ダワまではファストハイク、そこからは徒歩という感じですが、平均すると時速3.2㎞くらいのペースです。

浅間峠を過ぎてからは「荷物が軽い!涼しい!ポールが使える!」と気持ちが前向きになり、山の夜風って気持ちいいなとか、こんな道があるんだなとか、楽しく考えるようにしていました。

ゴールしたときの体の状態ですが、ペースが遅くて体力が残っていたのか、それとも感覚が鈍っていたのか、気持ちは「まだ歩けそう」でした。(太ももは完全アウト)

ちなみに、レースの翌日から5日間、前太ももだけ激しい筋肉痛に襲われましたが、それ以外の不調はなく、むしろ肩こりがとれていつもより調子が良かったです。

よく見ると写真中央で止まってます
すでに22時間経過し疲労困憊です

3.レースを終えて(感想)

日の出山を過ぎたところで親子のハイカーさんと目が合って『どこから来たの?』と聞かれました。

朝9時に日の出山を下る私はいったいどこから来たんだろう。スタートの五日市中学校から、今熊山、三頭山、御前山、大岳山、頭にはたくさんの景色が浮かびます。徹夜した頭では良い返事ができそうにありません。

「昨日のお昼の1時に武蔵五日市を出発して、奥多摩の山まで行って、青梅の山を越えて、ここまでずっと歩いているんです」(たぶんこんな感じのことを言った)

この会話をきっかけにゴール目前の安心感もあってか、ようやく過酷なレースに挑戦していることを実感しました。

自分には無理だと思っていたハセツネ、そのレースの真っただ中にいるんだ

これほど濃密な時間を過ごしたのは初めてかもしれません。一晩中、山道を歩くなんて、なかなか経験できることではありません。

走れなくて大丈夫、歩いてゴールできるんです。チャンスがあったらエントリーしてみてください。このブログが出場を迷われている方の後押しになれば幸いです。

最後になりましたが、大会スタッフの皆様、トリッパーズを通じて知り合い応援にきてくださった皆様、ありがとうございました!無事に歩いて完走できました!

【参考 装備品一覧】

<頭>パタゴニア/ダックビルキャップ

<Tシャツ> 山と道/メリノ ライト クルーネック ポケット

<上インナー>ファイントラック/ドライレイヤークールブラタンクトップ

<下インナー>ブリング/ワンダーウェア(パンツ)

<パンツ>パタゴニア/テルボンヌ

<長袖>スタティック/アドリフトクルー

<ウインドシェル>ティートンブロス/ウインドリバー フーディ

<レインウェア>モンベル

<靴下>ドライマックス/ライトトレイルランニング

<手袋>アンウェイステッド/アダプト

<シューズ>ホカ/スピードゴート4

<バックパック>マウンテンハードウェア/フリューイッド16

<ライト>

・レッドレンザー/H8R

・ジェントス/閃

・ウルトラスパイア/ルーメン用バッテリー18650

<時計>カロス/ペース3

<ポール>ブラックダイヤモンド/ディスタンスカーボンZ

<ゼッケンベルト>くまちゃんオリジナル/ゼッケンベルト

<ホイッスル>MIYAGEN/3Dホイッスル2g

<その他>ココヘリ、ニューハレXテープ、地図、サバイバルシート、携帯トイレなど

<給水>

・プラティパス/ハイドレーション2ℓ(グリーンダカラ)

・サロモン/アクティブ ハンドヘルド(水)

・ザ・ノース・フェイス/ランニングソフトボトル500ml(ルイボスティー・緑茶)

<補給食>

・メダリスト/エナジージェル×4

・マグオン/エナジージェル

・まるじゅ本舗/スゴ飯

・きーぽんライスワークス/おやさい甘酒(かぼちゃ)

・福壽堂秀信/さらっと飲める羊羹ANDO(アンドゥー)×4

・ケンプリア/MAGMA(マグマ)

・ミドリ安全/塩熱サプリ

・菓子パン×3

・栗まんじゅう

・アミノバイタル各種

・柿の種

プロフィール

まりそん
まりそん
Trippersスタッフ
2022年夏からトリッパーズのお店に立っています。
2018年の東京マラソンに当選し、練習用のランニングポーチを探していたとき、たまたま入ったお店がトリッパーズでした。初めて履いたトレランシューズが軽くて、これを履いて山に行きたいと思ったのがすべての始まりです。