Tokyo Grand Trail 110km ‐ 初めての100kmトレイル ‐《佐野 萌子》
はじめまして。Team Trippersの佐野です。
普段は登山、トレラン、オリエンテーリングをしています。
今回はTokyo Grand Trailの110kmに参加してきました!
レースの準備から当日の様子まで書いたので、TGTに興味のある方、100kmに挑戦しようと思っている方の参考になればと思います。

きっかけ
2025年の元旦、今年はトレーニングを頑張ろうと決意しました。
というのも、昨年はナビゲーションの大会をメインとしていましたが、MAMM(南アルプスマウンテンマラソン)ではバディについていくのがぎりぎり、OMM河津はStraight Eliteを走り、1日目タイムオーバー、2日目は体調不良でゴールに直行という不甲斐ない結果に…。
体調不良はさておき、その他の原因はトレーニング不足だと分かっていたので、まずは運動習慣を取り戻そうと決意しました。
ただ、目標なしに頑張れるほど強くないので、目標レースを設定しようと思い、探していた時に見つけたのがTokyo Grand Trail (TGT)でした。
160km、110km、60kmと3種目あり、60kmがちょうどよさそうと思いましたが、私が見た時点で60㎞は受付終了。じゃあ110kmやってみるか、とエントリーしました。
ちなみに、私の過去最長は88km、累積2500m、21時間(ノンマーキング読図ラン)なので、114km、累積8100m、36時間(MAX)は自分にとってけっこう大きなチャレンジ。
お正月でちょっと気が大きくなってたのかもしれません。
Tokyo Grand Trailについて

日時:2025年5月30日(金)~6月1日(日)
種目:160km (159km/累積獲得標高10,700m) 48時間
110km (114km/累積獲得標高 8,100m) 36時間
60km (59km /累積獲得標高 3,900m) 20時間
※昨年160kmを完走した人が挑戦できる?200kmも存在(160kmのスタート前に青梅から奥多摩まで40km走る)
コース:奥多摩スタートで青梅、武蔵五日市、高尾(160kmのみ)をぐるっと回り、奥多摩ゴール。
特徴(魅力!):ノンマーキング。コンビニの使用OK。他の大会に比べて制限時間は長いが、累積獲得標高が多い。スタートは夕方(15:50/16:00)。電車でのアクセス◎
レース準備
冷静になると、レースに対する不安がムクムクと湧いてきたため、まずはトリッパーズへ。
前回大会160km完走者のYOCがいる日を狙って行きました。YOCは200kmに挑戦とのこと。
YOCからは「さのもえなら大丈夫だよ」というアドバイス?をもらい、みんなに応援され、とりあえず頑張ろうと思いました。笑
※「大根の山ノ神~御岳で水切れが続出してた」とか有益なアドバイスももらえたので、話を聞きに行ってみるのおすすめです。
やったこと その1 ラントレ
不安だらけなので、トレーニングを頑張りました(自分比)。
距離で言うと、1月・2月は120km、3月・4月は230km、5月はレース前まで90km。
(ブログを書くためにGarmin、Corosの記録を見返しましたが、2019年~2024年で月間200kmを超えたのは1回だけでした。今回の気合の入りよう伝わりますか??)
理想は「前月比1.1倍程度で距離を伸ばす」だと思うのですが、休みの都合等でそこは上手くいかずでした。
やったこと その2 試走
ほぼ全区間試走しました。
TGTリベンジに燃えるチームトリッパーズ(以下チートリ)のたかにいを中心に3回試走し、ハセツネで走ったことのある区間(臼杵山、今熊山あたり)を除き、一通り走りました。

試走はしておいて本当によかったです!ノンマーキングな上に、林道から登山道へ切り替わる箇所や通矢尾根など、初見では難しいところが多々あったので。
また、コースを知っているメンバーと一緒に試走できてよかったです。今後挑戦される方も、経験者と試走に行くことをおすすめします。
あとは、実際のスタート時刻に合わせて、奥多摩(スタート)~青梅をオーバーナイトで走ったのもよかったと思います。(私は夜のトレイルが苦手だと再認識しました。怖くなると足が止まってしまう…)
やったこと その3 イメージ
トレイルのレースに出るのが超久しぶり(2023年のハセツネ以来)、かつ100kmは初めてなので、レースのイメージを細かくやりました。
どこを何時くらいに通過する、ここでは絶対トイレに行く、だいたいここで50kmだから回復系のサプリ飲もうかなとか、コース上のどこで何をすべきかを考えました。
あとは、気温が15℃くらいだったら厚手のレインに替えようとか、装備のパターンも考えました。

ちょっと失敗についても書いておくと、心配すぎて大会2日前に足つりに効くというエプソムソルト(入浴剤)を購入したり、当日朝、普段やらない肩・背中・腰のテーピングを動画の見よう見まねでやりました。
やってること自体はいいと思うのですが、直前すぎましたね…。テーピングは下手だったのかすぐはがれてしまいました。
いよいよスタート
レースへの備えはしました。それでも未知の世界への不安は拭いきれず…
山の中で動けなくなったらどうしよう…無事帰ってこれるかな…と心配しながら会場入り。この日は朝から雨でしたが、会場に着く頃にはほぼ止んでいました。
会場に着いたら、ゲストランナーの若岡さんが話しかけてくれました。若岡さんやトリッパーズのくまちゃん、出走者のみんなと話していたらリラックスでき、そのままの感じで15:50のスタートを迎えました。
とりあえず目標は無事完走!あわよくば、パフォーマンスインデックスから算出した目標タイム 31時間(土曜の23時ゴール)を狙いたい…!
くまちゃんと若岡さん チートリ出走メンバー
110kmの道中
ここで110kmのコースをご紹介。コースを5パートに分けて考えていたので、各パートごとに振り返っていこうと思います。
① 奥多摩 ~(本仁田山)~ CP1 大根ノ山ノ神 ~(川苔山、岩茸石山)~ C1 御岳
② C1 御岳 ~(高水山、青梅の山)~ CP2 梅郷
③ CP2 梅郷 ~(通矢尾根、勝峰山)~ C2 十里木
④ C2 十里木 ~(臼杵山、今熊山)~ C3 十里木
⑤ C3 十里木 ~(馬頭刈山、大岳山、御前山)~ C4 都民の森 ~ 奥多摩
ヤマレコ https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-4169836.html
① 奥多摩 ~ 本仁田山、川苔山、岩茸石山 ~ C1 御岳 区間27km / 到着21:50
スタート直後、これから160/110km走るとは思えないスピードで選手たちが飛び出し、着いていけませんでした。登りは歩き、平坦と下りは走る、とマイペースに進みます。ひたすら登りなので、すぐ暑くなり半袖に。
下りは1週間前に購入したトレッキングポールが大活躍しました。雨でぬかるんでいるところも転ばずに走れたのはポールのおかげだと思います。
川苔山へ向かう途中で雨が降り出し、冷えてきたのでレインとヘッドライトを装着しました。地面はぬか床みたいになっていました。
川苔山から川井に降りたところのマス釣場でセルフ休憩。
シューズに入ってた石を出し、ミルクティーを飲みました。試走時はホットドリンクがあったのですが、なくなっていたのが残念。
マス釣場の先の林道で、後々の救世主となるSさん(160kmに出場)に出会いました。
御岳への到着は予定より30分ほど早かったです。インナーファクト特製カレーがおいしくて、元気チャージできました!

② C1 御岳 ~ 高水山、青梅の山 ~ CP2 梅郷 区間17km / 到着1:46
この区間は苦手な夜の山。
なるべく一人にならないように、人の気配を感じられるところで走ろうと思い、高水山に向かっていると、川井で会ったSさんと再会しました。
Sさんは関西からの参加で、試走ができておらずコースが不安とのこと。Sさんのほうが若干速い気がしましたが、いけるところまで一緒に行くことにしました。
結果的に、160kmと110kmのコース分岐点までの40km弱、ともに走りました(たまに離れたりもしましたが)。
一人じゃないと夜道も全然怖くない。しかも、下りを走るコツを教えてくれて、話すことで眠気も回避できて、ありがたい限りでした。

話は戻り、高水山に登っていると、いつの間にか雨が上がっていました。ここから朝まで走りやすく(10℃くらい)、予定タイムを順調に巻いていきます。
そして、若干疲れが出始め、物忘れが始まります。走ってる時に次の休憩で胃薬を飲もうと思っていたのに、コンビニに着いたら忘れて、ご飯だけ食べて出発してしまう。みたいな。
ダルマを飲むのを忘れたり、シューズの石ころを出すのを忘れたりしました。この時気になっていたシューズの石ころは、結局ゴールまで一緒に旅をしました。
③ CP2 梅郷 ~ 通矢尾根、勝峰山 ~ C2 十里木 区間26km / 到着7:22
この区間は通矢尾根、金毘羅尾根と長い尾根が続きます。
通矢尾根がそろそろ終わるか?なかなか終わらないなーと思っているところで夜が明けました。
5時頃、日の出のコンビニに到着し、肉まんとフルーツゼリーを食べました。食欲は好調。この先コンビニがしばらくないので、次の区間の道中で食べるものも買いました(結局大雨で休憩する気になれず、食べなかったのですが)。
金毘羅尾根を降りきって、十里木が近づいてきたところで、声をかけられました。声の主はチートリのテラさん!
まだ朝の7時なのに応援に来てくれるなんて…!嬉しかったです。

十里木着はなんと予定より2時間も早い。ここでワンチャン終電で家に帰れる可能性が浮上してきます。
十里木ではデポバックを受け取り、雨と汗でびしょびしょのTシャツを替えました。止まっていると冷えるので、乾いた服に着替えたのはいい判断だったと思います。
おいしい出汁茶漬けとミネストローネをいただいて再出発。
④ C2 十里木 ~ 臼杵山、今熊山 ~ C3 十里木 区間19km / 到着13:07
この区間は一番きつかったです。
まず、次のポイントとなる臼杵山ですが、全然たどり着きません。道標がしっかりしている分、距離が減らない感じが辛かったです。
そして、やっと臼杵山を越えたと思ったら、160kmの選手とお別れの市道山分岐がやってきます。この時4人で進んでいたのですが、私以外みんな160km。いきなり一人ぼっちになりました。
さらに追い打ちをおかけるように、雨が土砂降りになり、雷が鳴り始め、トッキリ場のあたりでは強風も。さすがに心が折れました。

足がびしょびしょになるのはもう気になりませんでしたが、雷の音が大きく、怖さを共有できる人もおらず半泣きでした。雷雨は今熊山を下りるまで続きました。
山を下りるとましになったので、戸倉のセブンでフランクフルトとホットコーヒー、カップヌードルを買って自分のご機嫌をとりました。
十里木に着いてのんびり30分ほど休憩していると、梅郷で関門アウトになってしまったYOCとYOCサポート隊のみんなが応援に来てくれました!
久々に知り合いに会えて嬉しかったです。女子1位だよと教えてもらいびっくり。そして、元気が出たところで、後続の女性ランナーがきて慌てて出発。
⑤ C3 十里木 ~ 馬頭刈山、大岳山、御前山 ~ C4 都民の森 ~ 奥多摩 区間25km / 到着19:44
ここの区間は完全な一人旅。
1位になれるかもという欲が出たのと、後続が来てるかもという焦りがあり、馬頭刈山のあたりまで後ろが気になって落ち着きませんでした。笑
この変な焦りを断ち切らねばと思い、一旦ベンチに座って休憩。お腹にカイロを貼る、補給をする、などやりたいことをやって、気持ちを落ち着けて再出発しました。
このあとはゴールまでマイペースに進めました。
ラスボス御前山は簡単には登らせてくれませんでしたが、試走で経験していたので想定内。逆に、ここは長いぞーと思って挑んだので、意外と早く登り切れた感じがしました。
御前山から都民の森は激下り。トレイルは快調に下り、ロードに出たところで膝の外側にぴきっと痛みが…。ここまでよく持ってくれたなと思いつつ、ゴールまでまだ1時間くらいあるので、ロキソニンを投入しました。
ゴールは奥多摩の登計運動公園。公園への坂道が暗すぎて、合ってるか不安になりながらゴールへ向かいました。笑
坂の上では運営者のみなさんが待っていてくれました。そして、マイクを持っていたのは、チートリ(MERRELLの人)のすけさん…!!
全力で迎えてくれて、嬉しくて、にこにこでゴールできました!

最終的には予定より3時間15分早い、27時間54分でゴールしました。110kmを無事完走でき、女子優勝という嬉しい結果つき。
運営のみなさんにもほめてもらい、嬉しい気持ちで帰路につきました。
走り終えて
走り終わって思ったことです。
・準備が大事
気温や天候を想定して、適切なウェアを準備すること。実際に山で試して使いやすいギアや補給食を準備しておくこと。擦れ対策を事前にしておくこと。などなど。
準備できることってたくさんあるなと思いました。今回、トレッキングポールはぶっつけ本番だったので、ちょっとひやひやしました。
・めんどくさがらない
私はレース中、補給する、シューズの紐を締め直す、服を脱ぎ着する、スマホを見る、など色々めんどくさくなりました。
でも、怠ると長時間・長距離レースでは後半への影響が大きくなることが多く、まめに行動できるのが大事だなと思いました。
・気持ちに左右される
一人旅になった時に感じたことです。
身体が辛くても前向きな気持ちをもてると頑張れるし、逆に気持ちが潰れちゃうとパフォーマンスも落ちちゃうな、と両方経験して思いました。
・応援されると100%以上に頑張れる
当たり前っちゃ当たり前のことですが、チートリメンバーが応援に来てくれた時、160kmに出てたチートリのねこさんに御岳・高水山で応援された時に思いました。
運営の人たちも応援してくれて嬉しかったです。今後、大会ボラをする時や知り合いが大会に出る時はめちゃくちゃ応援しようと思いました。
以上です!長文にお付き合いいただきありがとうございました。
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おまけの話。謎の擦れについて。
レース中は全く気付かなかったのですが、お尻どうし(股ではなくお尻です)が擦れてたみたいで、けっこう大変なことになっていました。
ロングレース経験者の誰からも聞いてなかった部分の擦れなので、びっくりです。
次からはお尻にもガーニーグーを塗ろうと思いました…。みなさんもお気をつけて。
プロフィール

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Trippersのトレイルランニングチーム。
走力を上げる事を目指すのではなく、月に一回みんなで山を楽しむというスタンスで活動しています。