憧れたゴールゲートで見た景色 UTMB2026《関島 毅》
こんにちは!トリッパーズメンバーのネコこと関島です。
世界一のトレイルランニングレースの祭典、UTMB。そのトレイルランナーであれば誰もが憧れる舞台に参加してきました!

UTMBに出るまで
UTMBは、フランスのシャモニーをスタート・ゴールとして、モンブランを一周する世界最高峰のトレイルランニングレースです。
フランス、イタリア、スイスの3か国をまたぎ、山岳地帯を走り抜けます。およそ174km、累積標高約9,900m。
そしてUTMBは、誰でも申し込めば走れるレースではありません。
世界各地で開催されているUTMB World Seriesのレースなどを走りランニングストーンを獲得、条件を満たした上で抽選に参加し、出場権を得る必要があります。
私が出場したレースは、2024年の「Chiang Mai Thailand by UTMB(100k)」と2025年の「Kaga Spa Trail by UTMB(50k)」で、合わせて8 Stonesを獲得。
10以上持っていても平気で落選すると言われているので、当選したのは運が良かったのかもしれません。ただ、なぜか私は「絶対に走れるはず」と思っていました。
「UTMBのゴールシーンは別格」
そんな話を完走した人から聞き、これは出てみたいと思いストーンを貯めて2年、ついにスタートラインに立つことができました。
ちなみに今回は、環境に配慮した移動手段を選択することで、当選確率を30%ブーストできるシステムも利用しました。シャモニーまでの移動を証明するために、航空券や空港から宿までのバス、宿泊先の明細などを提出する必要があり、これがちょっと手間でした。
レースへの準備
UTMBのコースの特徴は一つ一つの山が大きいがゆえの長い登りと長い下り、それから標高の高さです。多くの日本のレースで見られる小さい山をつなぐ頻繁な登り下りのコースとは性質が異なります。よってトレーニングはそんなコースになるべく近い練習が出来る南アルプスや八ヶ岳へ通いました。トレーニングのための山行も楽しい時間でした。
月間走行距離300km以上、累積標高10,000m以上を一つの目安とし、トレーニングを積みました。


装備について
UTMBの必携品リストを見ると、暑さ対策と寒さ対策、その両方の装備が必要です。さらに当日の天候によっては、追加の装備が必要になることもあります。標高が高く、天候も変わりやすい山岳レースなので、天候への対応がレース攻略のカギになるのは言うまでもありません。
私の場合、ギアの確認も兼ねて、天候が変わりやすい標高の高い山で実際に装備を試しました。
今回選んだ主な装備はこんな感じです。

ザック:Answer4/フォーカスライトプラス
トップス:HERENESS/WOOL MESH TANK
ショーツ:TNF/インパルスショートタイツ
グローブ:UNWASTED/adapt
シューズ:Merrell/MTL ADAPT MATRYX(R)
ライト:milestone/MS-i1,MS-G3
レイン(上):mont-bell/ピークドライシェル
レイン(下)TNF/ストライクトレイルパンツ
インサレーション:Answer4/アルファダイレクト、インスティンクト/アドリフトクルー
ウィンドシェル:TNF/エマージェンシーフーディ
ポール:Black Diamond/Distance Z
寒暖差の激しい昼間と夜間のレイヤリングはかなり悩みましたが、アルファダイレクト+シェルの組み合わせで大体のところはなんとかなりました。アドリフトクルーは使いませんでしたが、必携品の要件を満たすために持っていきました。より天候が寒くなれば出番はあったかもしれません。
補給はジェル、セブンのわらび餅、ロクテインのドリンクミックスを組み合わせ、250kcal/hを目標にカロリー摂取の予定。
シャモニーへ
出国からレースまでのスケジュールはこんな感じです。
8/24(月)21:00 出国
8/25(火)15:00 シャモニー着
8/26(水) 観光
8/27(木) 観光、ビブ受付
8/28(金)19:45 スタート(悪天候予報のため2時間遅れ)
8/30(日)10:00 フィニッシュ
8/31(月) ジュネーブ空港発
9/1(火)13:00 帰国
出国の1週間前には歯の詰め物が取れるというアクシデントもありました。
なんとか型取りが間に合い、空港へ向かう直前に無事に詰め物が入るというドタバタぶり。この時点で、なぜか「完走できる」という確信に変わりました。
ところが、シャモニーに着いてみるとフランスの異常な乾燥に喉をやられ、咳が止まらなくなりました。
初日は移動だけでもかなり疲れます。今回は家族と義両親を含む大人4人、子ども1人の大所帯でシャモニーへ。
宿はリゾートマンションの1室(3LDK)を借り、基本的には自炊して過ごしました。日本からお米やレトルト食品なども持ち込みました。
各部屋にはシャワー、トイレ、バルコニーがあり、かなり快適。しかも、バルコニーからはモンブラン山塊がよく見えます。
レースまではロープウェイで観光したり、シャモニーの街をぶらぶらしたり、エキスポを覗いたり、のんびり過ごしました。







レース
【スタート】
スタート時間は17:45の予定でしたが、雷雨予報のため2時間遅らせた19:45に変更となりました。結果、レースは終始天候に恵まれます。ただこのときは「焦らすぜ…」が本音。
時差ぼけなのか緊張していたのか、早朝に目が覚めてスタートするまで眠れず、寝不足気味でした。
ビブを付けてあるいていると、色んな人が「Good luck!!」と声をかけてくれます。なぜか「君の写真撮っていいか?」なんて聞かれることも。
荷物預けてからスタート前の写真を撮ったりして、その場に待機しようかと思いましたが、雨が降っていることもあり一度宿に帰って30分前に並ぶことにしました。
その結果、後ろの方からスタートすることになりましたが、無駄に体力を消耗せずに済んでよかったのかもしれません。
スタートが2時間遅れた分、CCCのトップのゴールと時間が被り、それを待ってからスタート!
スタートゲート周辺は満員電車のような状態です。ゲートをくぐる瞬間、MCから聞こえてきた、
「Your Story!」
という言葉が強く頭に残りました。



【スタート〜Les Chapieux】
スタートしてからしばらくロード、林道です。ただ沿道の人が途切れることがありません。どこまで続くのか見ていると13km地点までまで続いていました。トレイルに入り一度途切れますが、Saint-Gervaisに降りてくると再び熱い応援をくれました。日本は人気があるのか、日本語で応援してくれることも多かったです。「日本頑張れ!」と並走して応援してくれた小さな姉妹もいました。
Contaminesを過ぎると赤色灯エリアに入ります。今年から始まったルールですが、動物に配慮して赤色灯しか使用できない区間があります。持っていった赤色灯ライトはmilestoneのMS-G3を使いました。15ルーメンで暗いだろうなぁと不安でしたが、満月だったので結果的に問題ありませんでした。
Chapieuxでは必携品のチェックあり。サバイバルブランケットとレインを確認されました。



【Les Chapieux〜Courmayeur】
セーニュ峠で夜明けを迎えます。周りの景色が初めてよく分かるタイミングでしたが、絶景が過ぎる!
今までこんな素晴らしいところを進んでいたのかと感動しました。この区間はかなり気温が低めだったのでアルファダイレクト+シェルで進みます。日が出てからは再びタンクトップになりますが、中間地点のクールマイユール目指して長い下りに脚を削られないように進みます。ここまでは予定通りの時間でしたが、上手くいかないのが100マイルレース。ペースが思うように上がらなくなります。




【Courmayeur〜Champex-Lac】
クールマイユールでタンクトップを着替え、日焼け止めを塗り、補給を入れ替えて再び走り出します。エイドが出たところに仲間が応援に来てくれて元気をもらいました。
ここからベルトーネ小屋までの登りがそこそこキツイのですが、強烈な眠気に襲われます。ベルトーネ小屋付近の日陰に、寝られそうな芝生を発見。そこで少し仮眠しました。景色の良いところで昼寝をするという、なんとも贅沢な時間です。少しスッキリしました。
ただ、あまり良いコンディションではないと感じていたので、ここからは目標タイムを追うことをやめ、完走目標に切り替えます。
しかし、ここからフェレ峠を降るまでは絶景のオンパレード。モンブランの南側の景色、グランドジョラスの圧倒的な存在感、日本には無いスケールの大きさでした。すれ違うハイカーさんが多いのも頷けます。
ここの景色が見れただけでもUTMBに出る価値はあると思います。
写真や動画を撮りながら、補給をとにかく多めに摂り、フェレ峠までなんとか歩みを進めました。
フェレ峠を過ぎると山小屋があり、そこでトイレに行ってから体が動き出しました。シャンペに着くまでの区間はかなり走れて順調に進むことが出来ました。シャンペに着く頃には日が暮れて、再び夜の区間へ入ります。






【Champex-Lac〜La Flégère】
シャンペはデポバック受け取りや、サポートもできるエイドです。エイドはクールマイユールよりかなり狭く、人もかなり多いため、自分が使える場所がなかなか見当たりません。なんとか席を見つけ座ると、これまでの疲労がどっと出たのか、しばらく何も出来ない状態に。なんとか補給を入れ替え、服を着替えるなどの準備をし、エイドを出ると1時間も経っていました。残すはラスボス3つの山。
一つ目のラスボス、Trientまでの区間で1番の眠気に襲われます。大きな岩が多い山でしたがなかなかペースが上がらず、時には立ったまま寝てしまいそうになるほど眠気がMAXに。何度も岩に座り休憩したり、カフェインを摂りますが全く解消されず。そんな時にピーク付近で転倒し、右手をちょっと切ってしまい流血してしまったのですが、そこからだんだん眠気がなくなってきました。怪我の功名ってやつなのか!?
ただこの区間は1番進みが悪く、予定よりも1時間も長くかかってしまいました。
2発目のラスボスはかなりの急登ですが、割と良いペースで登れました。下りもそこそこボリュームがあるのですが、ここまで眠気でペースが上がらなかった分、脚は残ってる感じです。
Vallorcineは最後のサポートエイドでした。周りの選手がサポートされてるのを羨ましく思いながらエイドを出ますが、終わりが見えてきました。最後の登りに差し掛かると夜が明けてきました。このときにはすっかり眠気はなくなりました。
悪くないペースで黙々と登り続け、La Flégèreのロープウェーが見えたときは本当に安堵しました。あとは下るだけ!



【La Flégère〜Finish 】
ゴールまでの最後の下りは、最初テクニカルな所があるものの、基本的にはかなり走れる気持ちの良いトレイルです。ここまでペースが上がらなかった分、かなり走ることが出来ました。シャモニーの街に戻ってくるとみんなが声援を送ってくれます。ゴール前で仲間や家族が待っており、自然と笑顔になります。娘と一緒に走ってゲートをくぐる予定でしたが、抱っこのポーズで待ち構えていました。最後の力を振り絞り、抱き抱えてフィニッシュゲートへ向かいますが、たくさんの人が手を叩いて祝福してくれます。ゴールまでの花道で見たその光景はとても幸せな瞬間で、目に焼き付けようと必死でした。
終わってみれば38時間03分の長い旅になりましたが、何よりスタートしてからゴールするまで感動的なシーンの連続で、とても幸せなレースでした。チームメンバーからもたくさんのメッセージが届いていたし、ゴールの瞬間を家族や仲間が自分と一緒に喜んでくれたことが何より嬉しいことでした。UTMBについては、現地住民から受け入れられていないという報道もあります。もちろん、いろいろな側面があるのだと思います。
それでも今回、実際にシャモニーを訪れて感じたのは、街とレースが一体になっているということでした。沿道にはたくさんの人がいて、街中でランナーを応援してくれる。UTMBが文化として根付いていることを、肌で感じました。
そして何より、どこを切り取っても素晴らしい景色の連続。今まで出たレースの中でも、間違いなくずば抜けて最高のレースでした。





最後に
⚪︎費用について
エントリー費 15万円
(キャンセル保証、写真購入費込み)
航空券 約25万円
宿泊費 約60万円(定員6名)
空港からのバス 約2万円(貸切バス使用)
円安もありそれなりの出費でした…。
⚪︎海外レースの難しさ
海外レースは今回で2戦目。相変わらず、ベストコンディションでレースに挑むことの難しさを感じます。
今回の場合、特に大きかったのは2つ。一つ目は、異常な乾燥に喉をやられ、風邪気味になってしまったこと。二つ目は、7時間の時差がある中で、レース直前までの睡眠マネジメントがうまくいかなかったこと。
まだまだ海外レースは課題が多く残ります。
⚪︎まとめ
初めてのUTMBは上手くいかないことばかりでした。それでも、そんなことはどうでも良くなるくらいの感動の連続でした。
いつかまた出たい!
出場するランナーのレベルは非常に高く、次に出るときは目標タイムが達成できるようなレース展開になりますように。
そして、MKT &タローがチームトリッパーズ率いて10年の節目に完走することが出来出て本当に良かったです。
憧れ続けたゴールゲートは、今でも憧れたままになりました。
プロフィール

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Trippersのトレイルランニングチーム。
走力を上げる事を目指すのではなく、月に一回みんなで山を楽しむというスタンスで活動しています。








