信越五岳トレイルランニングレース2022 《永木明日美》

【いざ、憧れのレースへ!】

初めてこのエリアに足を運んだのは2015年の秋。同じスタート会場を使用して開催される斑尾フォレストトレイルに参加。まだトレイルランニングを初めて間もなくの頃で走ったのはショート16k。メインの50kの選手のスタートを見送りその距離を走るなんて全く想像もできずただ感心するばかり。

ロードはすごく苦手だけど、トレイルを目の前にするとワクワクしてしまう。全コースがトレイルのレースが良い!なんて話をすると必ずおすすめされるのがトレイル率90%以上の信越五岳トレイルランニングレース。トレイル率の高さのみならず誰に聞いても大会の評判は抜群。レースへの憧れと何よりもこのエリアのフカフカで気持ちの良いトレイルの魅かれてボランティアやチーム合宿などレース以外でも何度もこのエリアに通うことに。

このレースはボランティアに翌年のレース出走権が与えらます。初めは100k越えのレースに出ることすら考えられず、ボランティアとして大会に関われる事だけで満足で2度ほど参加。でも友人達が走る姿を見たり、コンディションが常に良いわけでもない、今あるチャンスを大事にしよう!と思うようになり、とうとう参加を決意。ボランティアに参加して出走権利で、いよいよ憧れのレースへチャレンジ!

【コースデータ】

距離 111k (100マイル163k)

スタート 9/18(日)5:30AM (100マイル 前日6:30PM)

フィニッシュ 9/19(月)3:30

【レース前日】

友人達と受付会場の斑尾高原へ。

久しぶりのこのレース会場の雰囲気がなんだか嬉しい。知り合いと会っておしゃべりしたりひと通りブースを見て回ったり。ここで「ジェルをもう少し準備しようか、暑くなりそうだけど塩タブレット少ししか持って来てないなー」なんて考えていると、「どんなに涼しくても塩熱サプリは1時間に2個、あとは水を飲む!これやらないからみんな熱中症になるんだよー」と教えてもらいく塩熱サプリを購入。さらに寝る前にZENの「ダルマ」、スタート前にベスパのジェルを飲むと良いと言われ、不安をかき消すかのごとくこれまた購入。これが結果的に大正解だったと思う。

受付で参加賞などを受け取った後は1人ずつ写真を撮ってもらえると。まだ完走してないけど、元気なうちに撮ってもらえるのが嬉しいな。

受付を済ませたら車で約30分ほどの妙高エリアの宿に移動し、荷物の整理。マイルのスタートを観たい気持ちもあったけど、翌日の早い出発に備えてなるべく早めに食事をとる。食事中、18:30にマイルのスタートの花火の音が聞こえて来て、私のスタートはまだだけどレースが始まったという緊張感がじわじわと湧いてきた。

食事を終えてお風呂に入り布団の上でゴロゴロ。さすがに早すぎて眠れないのだけれど、なんとなくうとうとしながら朝を迎えた。

【スタート前】

4時ごろに会場に到着。ここではパン、おにぎり、コーヒー、スープなどの朝食を用意してくれてるので私はおにぎりを1つとコーヒー、スープをカップに半分ずつ頂いた。

トイレも済ませて準備は完了‼︎トレランのレースは男性選手の数が圧倒的に多いので女性のトイレはあまり並ばなくて済むのが嬉しい。

①スタート〜バンフ 19k (Start 5:30)

キレイな朝焼けを前にいよいよスタート。最初はゲレンデをぐるっと回ってすぐにシングルトラックに入るので立ち止まる事もしばしば。

「暑いですね〜。まだ3キロ、あと100キロ以上ありますよ!」なんて話しながら進んでいく。シングルトレイルを抜けると最初の荒瀬原ウォーターステーションまでの長い林道の始まり。スタートの時にプロデューサーの石川弘樹さんが「荒瀬原までは汗かかない!熊坂まではウォーミングアップですよ!」なんて言ってたけど、鈍足ランナーの私は最初から全力で行かないと間に合わない!

今回のレースプランは第一関門の黒姫に出来るだけ早く入ること、そして第二関門の笹ヶ峰までは、そこまでがレースだと思うくらいに全力で走る。とにかく脚が売り切れたって関門に間に合わなければ意味がない!

だからこの林道もなるべく良いペースの人に着いて行ってなるべく歩かない。あとは定期的になジェルの補給。だいたい1時間から2時間開かずにジェルを補給する。昨日ゲットした苦手な塩タブレットをもこまめにと食べることを忘れずに。最初の荒瀬原WSまでは良いペースで進み斑尾山の登りへ入る。

ここからは渋滞気味だけど、焦ってもしょうがない。休めるのはここだけと思ってのんびり登る。風が強いけど天気は晴れて景色は最高!やっと山頂まで登るとあとはゲレンデの激下り。下りではケガだけはしないように慎重に。

想定をかなり上回るタイムでバンフのエイドに到着。

まだ序盤なので水分だけを補給して出発。

②バンフ 19k 〜熊坂35k

ここからは何度か走ったことがある気持ちの良いトレイルがずーーっと続くエリア。最初の湿地帯は8月のチーム合宿でも走り、その時は雨で木道部分はツルツル、トレイルはドロドロであまりうまく走れなかった。今回は天気が良く、木道は乾いていてぬかるみもひどくない。しばらくして袴岳という山をひとつ越えるのだけれど程よい傾斜で登りやすい。コースもわかってるし走りやすいし、やっぱりこの辺りはレースじゃなくてもいつでも訪れたい素晴らしいトレイル‼︎

そんなトレイルを抜けて林道に入るとここで計測ポイント。前にいるいかにも速そうなランナーが時計を見ながら「えっ、めちゃくちゃ遅い‼︎」と大きな声で独り言。「えっ、そんな事言わないでよー、わたしすごく順調なのに、、、涙」私は心の中で呟く。

下り気味の林道が続いたのでなるべく良いペースで走っているランナーさんに着かせてもらう。こういうところは1人だとついダラけて歩いてしまうのでありがたい。

林道を抜けてしばらくで熊坂エイドに到着。

最初から全力で来たからかお腹が空いてアンパンとトマトを頂いた。普段食べると消化にエネルギーを使いしばらくちゃんと走れなくなってしまうのであまり固形物は食べないのだけど、まだまだ先は長いのでしっかり補給。

やっと一息つけると少しホッとするも、まだまだこれから。

③熊坂35k〜黒姫49k

いよいよ話しに良く聞いていた川沿いの長いロードセクション。

日差しを遮るものもなくジリジリと暑い。ここは約7キロでずーっと走らないといけないと聞いていたが、細かいキロ表示はないのでここでウォッチ使用。前に進んでることを確認しながら走ったり歩いたりを繰り返した。意外と順調に距離を刻みちょうど7キロあたりの宴会隊の私設エイドに到着。ここで頂いた紫蘇ジュースがホントに美味しく身体に染み渡った。ただがぶ飲みすることなく、コップ一杯だけもらってあとはフラスクを満タンに。普段レースではトイレに行くことはほぼ無いし、練習でも飲んでも飲んでも喉が乾くしトイレになんて行かなくても全然平気なのに今回は早々に排泄もしっかり。これは水分補給がちゃんと出来ている証拠かも。

後半のシングルトレイルは少し岩場や水場があるもののやはり走りやすいし楽しいトレイル。元気な時にまた走りたいパートNo.1!

ここからはマイルの選手とコースが合流するので、昨日の夜から走ってる人達がいると思うと頑張ろうと思えるところ。

そしてとうとう第一関門の黒姫到着。

関門まで1時間20分貯金で来ることが出来た。待っていてくれたサポートのみんなにも会えて元気をもらえる!脚はいろんなところが痛いけど、身体は動くからまだ進める。

いつもなら一度座り込んでしまうとなかなかまた動き出せないけど、今回は少し脚を休められてリフレッシュできた。

④黒姫49k〜笹ヶ峰60k

私の中での最初のゴールまでラスト11キロ。黒姫までだいぶ余裕を持って来られたのでここからは焦らなくても良いはずだけどあまり油断は出来ない。やはり後半のためにも少しでも余裕をもって笹ヶ峰まで行きたい。最初のゲレンデを登ったら林道が続いて行く。歩き続けてしまわないように、なるべく走ったり歩いたりを続けるようにする。ここからは100マイルの選手がペーサーと合流するところなので、フレッシュなペーサー達の雰囲気が伝わってきて、こちらもそのパワーをこっそり頂いた。林道が終わると後半は石があるテクニカルなトレイルや吊り橋、急登もあってバリエーション豊かなセクション。なかなか進まず貯金を少し使って笹ヶ峰エイドに到着。

ここではカレーを食べると決めていたので半分食べて充電。

⑤笹ヶ峰60k〜西登山道70k

さて、これからがレース本番‼︎

第二関門までこ来ることしか考えてなかったので、ここからはどう進もうか?

ホントは少し歩きたい。でもどんどん抜かされてマイルの選手も走ってるしやっぱりのんびりしてる時間はなさそう。夜になり暗くなってくるしとにかく進むしかない。進んだ距離と時間を知りたかったので区間毎に時計をランモードにしてとにかく辛くなったら距離表示を見て前に進んでいることを確認しながら進む。途中雨もパラつき始めた。笹ヶ峰のエイドで着替えたものの暑さは続いて汗でウェアはもうびしょ濡れ。でもこれから夜間になるので雨は出来れば降って欲しくない。幸いすぐに雨が落ち着き寒くもならずひと安心。

⑥西登山道 70k から大橋林道 76k

西登山道入り口からすぐにトレイルに。完全に夜となり少し走りづらいパートもあり心細くなってきた。ペーサーがいるランナーに追い越されると羨ましくも感じる。

そんな時、分岐誘導のボランティアのお姉さんがアイドル並みの明るさで元気な応援をしてくれた。石がゴロゴロの下りに苦戦していた私はその応援に応えるパワーが無くてまともに挨拶もできなかったけど、暗い中、100%の元気と笑顔で応援してくれていて本当に感謝!

⑦大橋林道 76k から戸隠スキー場 88k

ここからは牧場エリア。牧場の周りに張り巡らされた有刺鉄線が印象的。ちょっとバランスを崩してよろめき思わず有刺鉄線を握ってしまいそうに。危なかったーー(汗

あまりアップダウンはないのだけれど、暗闇の中、木道や窪みなどがあるのでまだまだ元気そうなペーサーさんがいるペアの後ろに着かせてもらった。「滑るよー、ここ凹んでる」などの声がけや足跡をついて行くだけでだいぶ楽になる。

何人かの後ろを走らせてもらったけど、最後の方にお礼を言って追い越すと「夜はみんなで行った方が楽だし自分はペーサーなんでまだまだ元気ですから!」と有難いお返事。こう言う人がペーサーだったら心強いね!

いよいよ瑪瑙山へ元気に出発!が、この後、このレースで初めてのツラさを味わうことに。

⑧戸隠88k〜飯綱林道入口98k

最後の関門戸隠エイド。75分前にIN。

予定よりは早いけど、それでもまだ安心はできない。ここからはラスボス瑪瑙山が待ってる。エイドでのんびりしている暇はないのだけど、ここでは戸隠蕎麦があるはず。なかなか見つけられず諦めて出発しようとすると別な部屋で提供しているとのことで急いでもらいに行く。蕎麦は絶対に外せない、と思ってたので大満足なのだけれど、あまり胃が受け入れずここでの蕎麦への執念があとで響くことに。エイドで待っていてくれたサポートのみんなから最後のパワーをもらいいよいよラスボス瑪瑙山へ。

ここは前回ボランティアで誘導を担当して場所。入口から少し入っていよいよ瑪瑙山への登りが始まるところで「ここから最後の急登です!頑張って‼︎」と声をかけていた所。マイルの選手の中には5分だけ休ませて、と言ってここで座り込む人も何人かいたっけな。今回もボランティアの方が誘導してくれている。私の時はそこまで寒く無かったけど、今回はジッとしているには相当寒そう。感謝の気持ちを伝えながら先に進む。

噂通りなかなかの登り。いや、信越のコースが比較的なだらかなだけで久々にパンチのある登りという感じ。ちょっと登ってトラバースするのが2、3回続いた。そして何よりも辛かったのが風と霧。前の人のライトが見えるだけで周りの状況が良くわからない、恐らく山頂から風で流されてくる誘導の方のカウベルの音と応援の声が聞こえるけど全然見えない、全然着かない!さらにさっき食べた戸隠蕎麦の消化を頑張っているのか胃が苦しくてちょっと気持ち悪い。「ニセピークが3、4回ある」と聞いていたのだけれどそれすらどこだったのか…?よくわからないままなんとか山頂到着。やはり誘導の方が待っていてくれた。とても寒い中、本当にありがたい。すぐに下りに入るが今度は急すぎて思うように進めない。瑪瑙山は噂通り辛かった。時間がどんどん過ぎていく。早くこのエリアを通過したい。でもスピードは全然上がらない。とにかく一歩一歩前に進む。

⑨飯綱林道 98k 〜ゴール111k

最後のエイドに到着。

「ゴールまで13キロ林道でーす!」とエイドスタッフさんの声が聞こえてくる。

「えっ、13キロ⁇」あと11キロだと勘違いしていた。気持ちがさらに焦る。知り合いにあっても挨拶もそこそこにパッと給水だけをしてすぐに出発。

林道と言ってもずっと林道じゃないんだろうな。トレイルあるあるでわかっているのにスタッフさんに聞いてしまう。私「全部林道ですか?」スタッフ「あっ、は、はい。。。」

残り2時間10分。あと13キロ。少し登り気味の林道だけど走れない感じではない。走れないパートが出てきた時のために、走れる林道は頑張ろう。スタッフさんも「あと○キロでーす!みんなでゴール目指しましょう‼︎」と声をかけてくれる。比較的広い林道なのでマイルの選手も110kの選手もペーサーもみんな続々とゴールを目指している。元気なペーサーさんが、「はい、肩の力抜いてー、水飲んでー」なんて声を掛けているのに便乗して自分も倣う。

すると「ここから少し荒れてまーす」という声が。「荒れてる?」って何だろと思っていたら、キャタピラーの跡がくっきりとついていて、足の置き場に困る厄介な道になっていた。最後の最後にこんな難所が。さらには林道からシングルトレイルに何度か入りなかなかゴールが見えてこない。もうずーっとトレイルに長い列が連なっている。プロデューサーの石川弘樹さんがあと3キロのところでもう少しと言ってくれていたのに、全然ゴールが見えて来ず周りのランナーも不安気。みんながザワザワしているうちにやっとトレイルが開けてとゴールの灯が見えた!嬉しさと安堵感。みんな一気にダッシュしてるけど、ここまで来たらのんびりゴールしても大丈夫。あと数百メートルのゴールまでに込み上げる涙をぐっと堪える。大きな声援を送ってくれる人がいて、つい笑顔になる。

そして、とうとうゴールゲートへ!

ボリュームゾーンのゴールなのでゴール前も渋滞、笑

「どーぞどーぞ」と譲り合う。

憧れのゴールテープを掲げてゴール!

笑顔でゴールしたのに、待っていてくれたサポートの仲間達の顔をみた瞬間に涙が溢れる。

最後は安堵感で無事にレース終了。

FINISH 21:44:12 総合304位 女性46位

ゴーーール!みんな待っててくれてありがとう!

【まとめ】

選手として初めて参加したレースは本当に素晴らしい大会でした。

選手、ペーサー、サポート、ボランティア、運営、そしてなんと言ってもとっておきのトレイル。どれも素晴らしくそれぞれがそれぞれの立場でみんなが主役の大会でした。

110kに関しては大きな登りはほとんどなく、やはり走らなければいけないコースでスピードがない私はレース中は気を休める暇もなかったけど、心配していた内臓トラブルもなく身体が元気だったので終始ポジティブに走ることが出来ました。今年は昼夜問わず暑くて熱中症や体調を崩してしまう人が多かったようです。今回はそう言ったトラブルが無かったのが完走の最大の要因かと。

ただ後半は夜間にもなり心細さも感じたのでペーサーがいたら良いなと思うこともあり、勝手に周りのランナーさんに仲間意識をもってメンタルを保っていました。

完走ペースだとエイドではあまり時間がなくバタバタしてしまうのでペーサーやサポートをお願いするのであればエイドでの時間配分や過ごし方など、事前に打ち合わせをしておくのが良いと思います。仲間達とゴールを迎えられるのもより嬉しいですよね!

今回のタイムテーブル

スタートバンフ19k熊坂 35k黒姫 49k笹ヶ峰 60k西山入口 70k大橋林道 76k戸隠 88k飯綱林道 98kゴール
想定5:009:0011:5014:0016:3018:3020:0023:001:303:30
実際のタイム5:008:3511:1013:4016:23ログ無し19:5622:251:173:14

【完走率】

110k      48%
100マイル 38.7%

【補給のこと】

消化に時間がかかる固形物があまり得意ではないので、あまり胃に負担をかけないようにジェルを多く摂取しました。

VESPA HYPER✖️1
アミノサウルス(カフェインなし)✖️2
マグオン✖️5
メダリスト✖️4
塩熱サプリ
マグマ✖️5(エイドに置いてあったものも含めて)
☆途中自販機がありましたが使用NGだそうです。

(エイドで食べたもの)
アンパン 1個
トマト 1個
リンゴ 2カケ
カレー 半分
蕎麦 1杯

【装備】

バックパック:SALOMON AdvancedSkin8
シューズ:ALTRA LONE PEAK
レインウェア上:OMM
レインウェア下:The NorthFace Strike Trail PANT
シェル上:Patagonia
シャツ:Answer4/MMA
パンツ:MMA
靴下:injinji outdoor midweight mini crew wool
帽子:Ranor

ヘッドライト:LEDLENSER NEO10R../PETZL

プロフィール

Team Trippers
Team Trippers
Trippersのトレイルランニングチーム。
走力を上げる事を目指すのではなく、月に一回みんなで山を楽しむというスタンスで活動しています。