ONTAKE 100mile 《小林遼志》
長野県は王滝村で開催された「ONTAKE100(旧おんたけウルトラトレイル)に出場しました。
この大会は100kmの部(制限20時間)と100mileの部(制限24時間)があり、なんと日本で初めてできた100mileレースなんです。(UTMFより古い!)
特に第一回の2008年の参加選手は豪華で、
1位 鏑木毅選手、2位 石川弘樹選手、3位 相馬剛選手、4位 松永紘明選手、5位 渡辺千春選手、6位 山本健一選手と名だたるレジェンド達が上位争いを繰り広げていた憧れのレースです。
今回僕は100mileの部に参加しました。
前回は2017年に朝長店長と一緒に100kmの部に参戦し、無事完走。実はこの時の朝長店長のレースレポに僕も写ってます。
https://trippers-wtrc.com/archives_3253
本当は去年(2018)もエントリーしていたのですが豪雨災害により中止となってしまい、2年越しの挑戦となりました。
・コース概要
100mileの部 / 100kmの部
距離:164km / 103km
累積標高:約4500m / 約2500m
制限時間:24時間 / 20時間
スタート時間:13日(土)20:00 / 14日(日)0:00
・目標&プラン
年代別入賞(3位以内)を目標にしました。
OSJのレースは5位までが総合入賞で6位から年代別の順位がつきます。総合入賞はまだ一度もしたことがなく、これまでの最高順位は2月の奄美ジャングルトレイル50kで獲った6位(年代別1位)です。
僕は30代男子で激戦区のため、確実に年代別入賞するためには総合で8位に入る必要があります。
2017年のリザルトを見ると総合8位は18時間53分。30代男子3位は総合12位で19時間32分。
19時間を目指して走り、厳しそうならペースを落として19時間台前半でなんとか粘れれば良いなという感じでタイム設定をしました。
細かい目標タイムを設定して一喜一憂しても仕方がないので、ざっくりと80kmまでは平均6'30/km、80km〜120kmは平均7'30/km、120km〜ゴールは平均8'00/kmで19時間という計算をしました。無理のないペースで走り、だいたいこれぐらいのタイムで進捗できていれば目標の順位に入れるだろうという計算です。ただし目標タイムから遅れているからペースを上げるということはせず、あくまでゴールタイムを知るための目安としました。
・トレーニング内容
林道メインのかなり走れるコースであること、スタート時間が珍しく夜であることがこの大会の大きな特徴です。
このレースは2019年前半(7月だけど)のメインレースとして位置づけ、3月からとにかく距離を踏むことを意識して練習しました。
前回走ってみて走れないような斜度の坂はひとつもないことが分かっていたので、行ける時は高尾方面の走れる林道に走りに行き、時間が取れない時もできるだけ近所の走れる坂を往復したりしました。
またロードの大会ですがアップダウンが激しくて有名な5月の野辺山ウルトラマラソンに出場し、これも大きなポイント練習と位置づけました。
野辺山ウルトラは9時間7分で13位とまずまず走れ、その後も故障することなく継続して走り込めました。
ナイトラン対策も一度だけですが夜中に林道60km走を行い、どんな雰囲気かを思い出しておきました。
レース2週間前からは疲労抜きのため練習量を減らし、10日前から眠気対策でカフェイン抜きをしました。(レース中にカフェイン入りジェルの効果を高めるため)
・スタートまで
新宿〜木曽福島駅は高速バスで、木曽福島駅〜王滝村は路線バスで行く予定でした。
高速バスは予約したつもりでしたがうまく決済できておらずキャンセル扱いになっていることに出発前日に気がつきました…行けないかも⁉︎と焦りましたがなんとか電車の特急券が取れ一安心。
土曜朝8時ぐらいの新宿発の特急で塩尻まで行き、塩尻でお昼を食べ、また電車に乗って木曽福島駅まで行きました。
木曽福島ではスーパーで食べ物を買い込み、13:40発の路線バスで王滝村へ行きました。
受付は17:00までなので、まずシャトルバスで会場(松原スポーツ公園)へ行き受付を済ませてから少しブースなどを見て回り、またシャトルバスで公民館へ戻りました。
前回は前日に宿を予約しましたが布団に入っても全く寝られなかったため、今回は公民館で過ごすことにしました。買ってきた食事をしたりのんびり準備をして、19:00ごろにまたシャトルバスでスタート地点である松原スポーツ公園にいきました。
会場についたら荷物を預けたりコース説明を聞いたりしているうちにあっという間にスタート時間に。
スタート時は道の左右に100kmの選手か応援の方か分かりませんが、ものすごいたくさんの人達が手を叩いて盛り上げてくれました。めちゃくちゃテンション上がる!ありがとうございます!
・レース レポ
スタート→CP1(3:57:50/区間24位)
スタート前から雨が降っておりカッパを着るか悩みましたが、走り始めてから途中で着るのは面倒なのとできるだけ止まりたくないし雨もやみそうもないので最初から着て走りました。
最初のエイドまでは600m一気に上って800m一気に下る峠越えのルート。無理はしないが遅すぎないペースで淡々と進みます。みなさん最初のロードを結構飛ばすので、トレイルに入るところでは50番手ぐらいかなと予想。上りは暑いので前を開けてせっせと進み順位を少しずつあげていきます。
10km通過タイムは1:00(区間平均6'00/km)。
ジェルは1時間に1本補給していきます。
峠を登りきって下りに入ると周りのランナーが急に飛ばし始めます。下りで飛ばすと前腿を使ってしまうので温存するためにあえてゆっくり進みます。
20kmは看板を見逃してしまい通過タイム不明。
下りきったところのエイドは水のみでしたが、大瀬さんがいました。明るいテンションで選手を迎えてくれました。
そこからCP1まではまた700mの上り。
ここは無理せず歩きを挟んで慎重に上っていきます。
まだ眠くはなかったのですが、念のためにカフェイン入りのジェルを投入。練習のナイト林道ランで眠くて全く体が動かなくなったので早めの対策をしました。
30km通過タイムは3:03(区間平均6'09/km)。
長い上りを耐えて少し下るとCP1に到着です。
走っている間はランナーが少なく感じましたがエイドにはたくさん選手がいました。ここにあの有名な井原知一選手(トモさん)がいました。
トイレに行ってバナナを食べ、ソフトフラスクにメダリスト粉末を溶かして水を入れます。エイドではこのルーティンです。
CP1→CP2(1:42:31/区間7位)
エイドを出るとまた上りが続きます。
まだ元気なので淡々と上っていくと、しばらくして先にエイドを出ていた井原選手に追いつきました。なんというか余裕が感じられました。この先の長い道のりを全て分かっているような…自分はそこまで分からないので、どうせ後半追いつかれるだろうけどまあいいや、と思いとりあえずパス。
40km通過タイムは4:20(区間平均7'42/km)。
このあたりから他のランナーになかなか合わなくなります。
ひたすらアップダウンを繰り返し、疲労を感じるようになってきます。あまりコースを覚えてませんが、良いペースで淡々と走っていたと思います。
50km通過タイムは5:26(区間平均6'36/km)。
やがて52kmのエイドに到着。トイレに行って水を補給。
雨の降る中パワースポーツ代表の次郎さんが笑顔で迎えてくださり和みます。エイドはオアシスですね。
CP2→CP3(3:47:46/区間4位)
ここも他のランナーになかなか会いませんが、たまに前の選手を見つけてはパスしていたので良いペースで走れていたと思います。前を頑張って追うために2本目のカフェイン入りジェルを投入。今回は不思議と眠気を感じていないので、10日前からのカフェイン抜きとレース中のカフェイン摂取タイミングはうまくいっているようです。
60km通過タイムは6:29(区間平均6'18/km)。
何人か抜かしたのですが、ここもコースはあまり覚えてません。ただ、そろそろ100kmのトップに抜かされるかな?誰がトップだろう?ということを気にしていたのは覚えています。(結果的に抜かれることはなかった)
あと折り返しスライド区間があり、ここで前後のランナーとの差を確認することができました。
70km通過タイムは7:32(区間平均6'18/km)。
自分の感覚ではそろそろ20〜30位ぐらいかな?と思っていました。
やがて73kmのエイドに到着。前のエイドから21kmあったのでとても長く感じました。まだ半分行ってないのかと思うと少し弱気になりました。
エイドを出てまた淡々と進みます。
80km通過タイムは8:39(区間平均6'42/km)。
このあたりではもう前の選手になかなか追いつかなくなりますが、CP1ぐらいからここまで一人も抜かれていないので良いペースで走れているんだろうと自信を持つように心がけました。
また、この辺りで夜が明けて元気が出てきます。
やがて久しぶりに前のランナーを見つけます。なかなか追いつきませんが向こうも疲れているようで、少しずつ差を詰めていき追いつきます。
順位を聞くと8位とのこと。20位ぐらいだと思っていたので驚きました。しばらくしゃべりながら一緒に上っていき、さらに前のランナーが見えたので先に行かせてもらいます。
頑張って前のランナーをパスし、心を折るために一気にペースを上げて突き放します。この時点で7位です。
間も無く86kmのCP3に到着。ドロップバックを受け取れる大エイドです。荷物の詰め替えをしている選手が2人いました。5位の選手と6位の選手です。まさかの総合入賞ラインがそこにありました。
ドロップバッグには後半用のジェルとストック、garmin充電用のモバイルバッテリーとコード、それからサングラスとストックを入れていました。
天気が悪いし必要なさそうだったのでサングラスは取らず、夜が明けたのでライト類を預けました。
CP3→CP4(3:46:00/区間9位)
一人は先に出てしまいましたが、もう一人よりは先に出発しました。この時点で6位。ここから第1ループのコースです。
しばらく長い下りを良いペースで走っていると、先にエイドを出た5位の選手に追いつきました。
ゼッケンの番号から24時間走日本記録保持者の重見選手だと思いました(ゴール後に確認したら合ってました)。
ここでも心を折るためにスパートをかけ、一気に突き放して背中を見せないようにしました。この時点で夢の総合入賞圏内の5位です。
90km通過タイムは9:48(区間平均6'54/km)。
ここからは「総合入賞」の言葉が脳裏をチラつき、リードを広げようとオーバーペースになり始めます。振り返ってみるとここはもう少し温存して走るべきでした。
この長い下りはループ区間なので再度同じところを走ります。あまりに長いので足がだいぶらやられてしまいます。
下りきるとループ区間へ。
ここで念のためにスタッフの方に順位を聞くと「5位です」との返事が。間違いない。
しばらくロードを上り続けるとやがて長くて暗いトンネルが出現。しまった…ライト類を預けてしまった…
最初はそのまま真っ直ぐ走ろうとしましたが、すぐに転びそうになり断念。携帯のライトを頼りに進みました。トンネルを出るところで後ろを確認すると、入り口にライトの明かりが!差はあまりついていません。必死に逃げます。
100km通過タイムは10:49(区間平均6'06/km)。
コースは違えど一昨年100kmの部を走って10:48だったのでややオーバーペースでしたが頭の中は「総合入賞」でいっぱいでした。
トレイルに入ると斜度は急になり歩く回数が増えてくる…後ろを気にしながら先を急ぎます。
長い上りを終えてCP3に戻ってくると、先ほどとは打って変わって多くの選手で賑わっています。
後ろが気になりますが先ほどモバイルバッテリーを取り忘れていたので、急いで取り出しすぐにCPを出ます。100マイルのログを残したくて…
足取りはだいぶ重くなってきましたが、長い下りを飛ばします。この辺りで100km女子3位の大石由美子選手に抜かされ、少しだけ会話をしましたがものすごい速さで先に行ってしまいました。さすがに足が重くついていけません。
110km通過タイムは12:07(区間平均7'48/km)。
やっと先ほどのループコースとの分岐にたどり着き、一周してきたことをスタッフの方に確認してもらい先へ進みます。
ロードに出て少し進むと間もなく素麺エイドに到着です。
甘いジェルで口が飽きてるので素麺がめちゃくちゃ美味しかったです。フルーツも色々ありスイカをいただきました。ここで食べたスイカは大げさではなく人生で一番美味しかったです。
ずっとスイカを食べていたいけど後続が気になるので、後ろ髪を引かれる思いで先に進みます。
そこから次のCP4まで4kmとのことですが、緩やかなロードの上りが続き100kmの選手にどんどん抜かされていきます。いよいよ走れなくなってきました。最早これまでか…抜いていく選手達のゼッケンを確認して「良かった100mileじゃない…」と安心します。
ふらふらになりながらなんとか118kmのCP4に到着。
ラッキーなことにここでまたスイカがあり、貪るように食べました。実はいつからかジェルを欲しなくなり1時間に1本のルールが守れなくなっていました。ここでは私設エイドでしょうか?コーラがあり美味しくいただきます。
100kmの友人にばったり会い少し会話をしますが、先を急がなければならないのでお互いの健闘を誓いすぐに出発します。
CP4→ゴール(5:40:35/区間7位)
残り40km強、果たして逃げ切れるのか…
雨もほとんど降っておらず蒸し暑くなってきたので、初めてレインウェアを脱ぎます。
120km通過タイムは13:14(区間平均6'42/km)。
動かない体を必死に動かして、走ったり歩いたりを繰り返します。もう走り続けることはできません。
途中で分岐がありスタッフの方が立っていました。聞くと第二ループの合流地点とのこと。
そこから長くきついガレ場が続きますが、あまりにきつすぎてもう一度ここを通ることを脳が拒絶します…
しばらく進むと110km地点ぐらいで抜いていった大石選手に追いつきます。あちらもかなりきつそうで、お互い励まし合いながら頑張って進みます。ここは本当にきつかったので引っ張っていただきとても助かりました!ありがとうございました。
とにかく長い下りのガレ場を頑張って進みます。ここまでくると下りがかなりきつく、下りなのに走ったり歩いたりしてしまいます。
130km通過タイムは14:27(区間平均7'18/km)。
途中で大石選手にはついていけなくなりますが、果てしなく長いガレ場をなんとか下り切り、最後のループの入り口に到着します。
ここでスタッフの方に前との差を聞くと30分ぐらいとのこと。どうやら追いつくのは無理そうです。やるべきことはとにかく少しでも前に進んで順位を下げないこと。
ループに入ると100kmコースの最初の上りのルートを通ります。どこまでも続く長い上りを歩き倒します。つらい…ここまできてリタイアが頭を過ぎるほど追い込まれます。歩いてるだけなのに死ぬほどきつい…
何時間にも感じる果てしない上りで「くそっ!なんてコースだ!」などと一人で悪態をつきながら歩きます。後ろに選手が見えたらもう逃げるの不可能だな。ここまできて総合入賞を逃すんだ…と完全に弱気になってしまいます。
後ろをずっと気にしていますが、たまに岩なのかガードレールなのかを後続の選手に見間違えて凹んだりしていました。幻覚のようです。
ところが不思議なことにいくら歩いていても誰にも追いつかれません。今思えばみんな同じようにきつかったんでしょう。そりゃそうだ。ここまで130km以上進んできたんだから…
140km通過タイムは15:47(区間平均8'00/km)。
やっとの思いで合流地点につき、満身創痍の自分の姿を見てスタッフの方が優しく微笑んでくれます。そうだよな、つらいよな、と励ましてくれているようでした。きっと相当ひどい顔をしてたんでしょう。
この辺りで何が何でも総合入賞したい!と気持ちが強くなってきます。
すると不思議なことに上りでも少し走れるようになります。戦うべき相手は自分の弱い心ということなんですね。
100kmの選手をどんどん抜かしていきますが、たまに「100マイル頑張れ!!」と励ましの言葉をいただきます。皆同じようにつらいはずなので、すごく嬉しく力になりました。
150km通過タイムは17:09(区間平均8'12/km)。
最後の下りは何回も立ち止まりましたが、足が壊れても良いというぐらいのつもりで走りました。
なんとか追いつかれずに最後のエイドに到着します。ここからはほぼ平らな林道とロードを6km走ればゴールです。
一昨年100kmの部を走った時はここで走れなくなりトボトボ歩いているところを2人に抜かされました。
今回は入賞がかかっているため死にものぐるいで走ります。長い直線で後ろがきていないことを確認して、入賞を確信します。
松原スポーツ公園に入る橋で前から来た車にパワースポーツの次郎さんが乗っていて「5位おめでとう!」と声をかけてもらいます。あまりの嬉しさに泣きそうです。
最後の急坂は半分ぐらい歩いたけど、ゴールまで全力で進み続けてついに夢のゴール!!
タイム 18:54:42
順位 5位 / 205人
ゴールではDNFした友人や100kmの部を完走した友人が迎えてくれ、あまりの嬉しさに泣きました。
・まとめ
1.下りは飛ばすな
2.エイド滞在はできるだけ短く
3.戦うべき相手は自分の弱い心
・装備
バックパック:Ultimate Direction / AK Mountain Vest
シューズ:TECNICA / Maxima 2.0
レインウェア:Patagonia / Storm Racer Jacket
帽子:Patagonia / Duckbill Cap
シャツ:SAYSKY / Tropic Race Singlet
パンツ:Mountain Hardwear / Mint Hill Short RUY
ソックス:itoitex / ランニングソックス5本指ショート
時計:garmin / fenix5
ライト:LEDLENSER / H8R
予備ライト:LEDLENSER / M5
ストック:Black Diamond / モデル名不明(古いZポール)
・補給食
ジェル:アスリチューン 、メダリスト
ドリンク:メダリスト粉末
練り梅
プロフィール
-
喫煙&運動不足の不健康な20代を過ごし、30歳を過ぎて走り始めました。
初トレイルランニングレースは2015年キタタン。
2017年におんたけウルトラトレイル100kを走ってOSJ沼にハマる(他のレースもたまに出ます)
足りないセンスは努力でカバーします。
OSJトレイルランニングレースシリーズ
2023年 4位
2022年 1位
2021年 2位
2020年 2位
2019年 4位
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